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現役バンドマンから見る音楽への新型コロナの影響
更新日時:2020年07月20日
エンターテイメント業界全体に大打撃が走っている。新型コロナウイルスの影響が日本でも出始めたころ、クラスター感染が起こり最初にやり玉に上げられたのはライブハウスだった。
メディアは叩きやすいと見たのか、我先にとライブハウスとそこに集まる若者に対してバッシングを始めたのだ。ライブハウスに通っていたような若者は発言権が小さく、せいぜいSNSなどで「満員電車の方が密度が高い」などと反論する程度で、やはり大きな発言権を持つメディアと、それを妄信する人々の発する「世間一般の意見(として扱われているもの)」には敵わなかった。そもそも、これよりもこっちの方が悪いという論議の仕方がズレているという点はあれど、実際に満員電車の方が遥かに「密」であることは明らかであったはず。
あとは飛行機やホテル、そして何よりライブハウスでの密が気になるところだったけど、「これで感染するなら通勤電車なんて乗れない」と思うくらい、対策がなされていた。これでもし感染しても、運がなかったんだと考えよう。#さかいゆう pic.twitter.com/xPvQDkJFnO
— 金太郎☆ (@kintaro0813) July 15, 2020
しかしながらその「世間一般の意見」というものは非常に厄介で、これが肥大していくと「行き過ぎた正義」となり、やがてその正義はそれを発する本人でも気付かない速さで「悪意」に変わっていく。
本来、そういったシニカルな問題に首を突っ込めるところが音楽の良い所であったりもするのだが、今回に関してはその音楽が特に悪者としてやり玉にあげられているのだから、そもそも高齢化の進む、しかも音楽にメッセージ性よりもアイドル性やキャラクター性を求めてしまうこの国では、今は発言しても無駄という空気感になっていったのは誰の目にも明らかだったように思う。
筆者は現役のバンドマンだ。
音楽が好きで、音楽に救われた経験も、音楽に背中を押された経験もある。しかし、そんな時だからこそしっかりとした意見を持つ賢いミュージシャンほど何も言えなくなってしまっていた。とても健全とは言えない状況であった。
札幌COLONY閉店から見えて来たエンタメ業界の本質
今になって、少し新型コロナウイルスの影響は薄れ、危機感がなくなってきたのでは?と思う人も増えてきたくらいの方が健全に感じているくらいだ。
しかし、当然ながらそのツケはライブハウスを始めとする音楽業界の末端であり最先端の部分に影響を及ぼした。
4月の末、筆者も住んでいる札幌を代表するライブハウスである札幌COLONYが閉店となり、発表した日はTwitterのトレンドで日本一の勢いだった。
札幌COLONY、何度もお世話になりました。ステージが高くて縦長で音が良くって楽屋が年季入ってていつもウェルカムボード書いてくれてスタッフさんも優しい方ばかりで、本当に素敵なライブハウス。悔しいし寂しいけど、最高の思い出は一生残ります、忘れません。COLONY、ありがとうございました。 pic.twitter.com/xuO0KfMeIe
— ファーストサマーウイカ (@FirstSummerUika) April 12, 2020
札幌colonyの閉店…悲しい。我らがメジャーを離れ、あれこれ模索していた時に、ウエケンさんから教えてもらった場所。札幌ライブの仕切り直しが始まった場所。いくら、お礼を言ってもキリがない。いつか、また、復活を待ってます…
— フラワーカンパニーズ (@FlowerCompanyz) April 12, 2020
札幌COLONY、いいハコなんですよ
当日限定のオリジナルカクテルを作ってくれたり、楽屋には必ず出演者へのメッセージボードを置いてくれたり。
お客さんだけじゃなく、出演者も楽しませてくれるライブハウス。
こういう心遣いに胸を打たれました。
18年間、本当にお疲れ様でした。愛をありがとう。 pic.twitter.com/nDJnVQHhcg
— 三原 健司(フレデリック) (@kenditter) April 12, 2020
COLONYは札幌のみならず、日本中から若手バンドマンや有望なバンドマンが集まり、そして巣立っていく素晴らしいハコであった。サカナクションもインディーズ時代によくライブしていたりした事で、閉店時にはボーカルの山口氏もツイートしており、その後店長と対談という形で配信も行っていた。当然コロニーには筆者も世話になっており、関係が近しいので関係者から事前に話は聞いていた。このままでは相当ヤバいと。
しかし、それでも、日本中のバンドマンが、そして音楽好きの人々が愛したコロニーは無くなってしまった。
つい先日は、秋葉原の老舗「秋葉原グッドマン」も潰れてしまい物議を醸していた。ここだって、何度かライブをさせてもらったハコだし、とても悔しい思いがある。
何故、こうもライブハウスが潰れていかねばならないのか。
配信、観てくれてありがとう。
アーカイブは一週間残りますので、見逃した方もぜひ。いま横須賀に帰り着きました。
写真は、帰り際、見送ってくれる秋葉原グッドマンのスタッフさんたち。
やっぱりここで二度と演奏できないのは嫌なので、諦めないことにしました。 https://t.co/BTe6D0zGOP pic.twitter.com/XHjAaAspy1
— 七尾旅人 (@tavito_net) July 12, 2020
エンターテイメント業界全体に明るいわけでないので、主語をあまり大きくすると大袈裟になってしまうかもしれないが、こういった事態にエンタメはあまりに弱い。
しかも、何故か世間的にはその業界の人は「いつも遊んでいるようなものだから」と、童話「アリとキリギリス」のキリギリスのような印象で語られる事も多い。実際は全くそんな事はないのに。手を差し伸べるなら真面目なアリの俺たちからだろうと、そういった意見を恥ずかしげもなく晒している者も散見された。
普段、何のエンターテイメントにも触れずに過ごしている日本人なんていないだろう。その裏では並々ならぬ努力や、所謂普通の幸せを断っているからこそ掴んだ地位であったり、ライブハウス等の現場に至っては、普通の仕事と何ら変わらない大変な仕事であるのに。
まとめ
今、少しずつ札幌の音楽業界は、助けや賛同を増やしている。(北海道では独自の音楽業界への補償などがある)しかし、これはもちろん音楽業界で普段働く人達が一生懸命「正攻法」で行政に働きかけ、真面目に自粛したり何とか楽しんでもらう方法を「自費で」模索し続けた結果だ。
こんな動きや思いが、日本中に、そして普段は気付かずにエンターテイメントに触れている人達に少しずつでも伝染していってくれたら、嬉しいと思う。
そして、本当の音楽の出番は、その先に必ずあると信じている。